アスベストは、平成16年頃まで多くの建材として使用されていましたが、健康面への影響などを考慮し平成18年9月に一部の特殊製品を除く全ての製品への使用が全面的に禁止されました。
しかし、当時アスベスト含有建材を使用して作られたものが現在でも残っており、アスベスト含有建材が使用されている建物を解体する際には、まわりへ飛散しないような対策が重要となっています。
そのため、神戸市ではアスベスト含有建材を使用した建物を解体する際の、アスベスト除去に関する規制が定められているのです。
今回は、神戸市の解体時のアスベストに関する規制について詳しく解説していきたいと思います。
【神戸市の解体時のアスベスト規制】アスベストとは?
それではまず、そもそもアスベストとはどのようなものなのか?というところから解説していきましょう。
若い世代では、アスベストに関して詳しく知らないという人が多いと思いますが、アスベストについて体への影響を知らないまま建物の解体工事を行ってしまうと、トラブルの原因になる可能性があるので覚えておきましょう。
アスベストは、石綿とも呼ばれ熱や摩擦に強いという特徴があります。
丈夫で変化しにくいという性質を持っている事から、アスベスト含有建材の使用が禁止されるまでの期間、多くの建材製品で使用されてきました。
具体的には、戸建て住宅などの外壁や屋根、ビルの柱や梁・天井・壁などに吹き付けて使用されていました。
しかし、アスベストは非常に細かい繊維である事から、飛散すると吸い込みやすく体の中に入り込むと肺の中の細胞に刺さり長く滞留してしまう事が分かりました。
肺の細胞内に滞留すると、細胞が傷付き活性酸素が生じ「肺がん」や「悪性中皮腫」などの病気を引き起こす原因になるのです。
アスベストを吸い込んだ事による健康被害は、症状が出るまでに15年~50年という長い潜伏期間があるため、表面化するまでに時間がかかりましたが、このような健康被害が起きる原因になる事が判明し、現在ではアスベスト含有建材の使用が一部を除いて禁止されました。
神戸市の解体時のアスベストに関する規制とは?
では次に、神戸市で定められている建物の解体時のアスベストに関する規制について解説していきたいと思います。
アスベストに関する規制は、令和2年6月5日に「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が公布され、令和3年4月1日から順次施行され罰則等が強化されています。
この規制の対象となるのは、アスベストが飛散する原因となる建築材料が使用されている建築物、または工作物を解体・改造・補修する作業全般です。
対象となる特定建築材料とは、建築材料に含まれるアスベストが0.1重量%を超えるものを指します。
建築材料の具体例は、下記のようなものが挙げられます。
・吹き付け石綿:石綿含有吹き付けロックウール、石綿含有ひる石吹き付け材、石綿含有パーライト吹き付け材
・石綿を含有する断熱材(レベル2):屋根用折板裏断熱材、煙突用断熱材
・石綿を含有する保温材:石綿保温材、石綿含有けいそう土保温材、石綿含有パーライト保温材、石綿含有ケイ酸カルシウム保温材、石綿含有水練り保温材
・石綿を含有する耐火被覆材:石綿含有耐火被覆板、石綿含有ケイ酸カルシウム板第2種
・石綿を含有する仕上げ塗材:石綿含有建築用仕上げ塗材
・石綿含有成形板等:石綿含有成形板、石綿含有セメント管、押出成形品
【神戸市】解体工事前のアスベスト事前調査
では次に、解体工事前のアスベスト事前調査について解説していきたいと思います。
令和5年10月1日着工の解体工事から、「建築物石綿含有建材調査者」または「日本アスベスト調査診断協会の登録者」が建築物の事前調査を行う事が義務付けられます。
事前調査は、元請業者が解体工事の施行前に、解体工事を行う建築物にアスベスト含有建材が使用されているか否かを、設計図書その他の書面による調査・目視調査等で行います。
調査の結果、アスベスト含有建材が使用されている事が分かった場合は、吹き付け材は隔離して除去作業を行い、屋根や壁などの建材にアスベストが含まれている場合は割らずに原型のまま撤去します。
【神戸市の解体時のアスベストに関する規制】解体工事の流れ
それでは最後に、解体工事の流れについて解説していきたいと思います。
アスベスト含有建材が使用されているかどうかの事前調査の結果に沿って、解体工事が行われます。
事前調査によって、アスベスト含有建材の使用が確認された場合は、石綿含有建材の種類や施工方法・延床面積によって除去作業を行う前の届け出をする必要があります。
レベル1・2の除去作業を行う際は、「特定粉じん排出等作業実施届出書」を作業開始日の15日前までに提出します
延床面積80㎡以上の建築物の解体の際は、「特定工作物解体等工事実施届出書」を工事開始日の8日前までに提出します。
延床面積1,000㎡以上の建築物の解体の際は「特定工作物解体等工事実施届出書」を工事開始日の8日前までに提出します。
解体工事が完了したら、工事の元請業者は発注者に作業完了を報告書で提出します。
まとめ
さて今回は、神戸市の解体時のアスベストに関する規制について詳しく解説してみました。
アスベスト含有建材が使用されている建築物は、現在でも存在しているため解体の際には飛散防止を徹底する必要があり、法律の施行と共に罰則が強化されています。
元請業者は、解体工事を行う際には公衆の見える場所に事前調査の結果や解体工事の内容を掲示する義務があるので、近隣住民とのトラブルにならないよう、掲示板を見れば誰でも確認できるようになっています。