「成年後見人がついている場合、不動産は自由に売却できるのか?」
「家庭裁判所の許可は必ず必要?どんな手続きになるの?」
高齢化の進展により、認知症などを理由に成年後見制度を利用するケースが増え、それに伴い不動産売却の相談も年々増えています。しかし、成年後見人による不動産売却は、通常の売買とは大きく異なり、「本人の利益の確保」と「家庭裁判所の関与」が前提となる非常に慎重な手続きが求められます。
特に、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となるなど、ルールを理解せずに進めると契約自体が無効になるリスクもあります。
この記事では、成年後見人による不動産売却について、手続きの流れ・注意点・必要書類を実務目線でわかりやすく解説します。
1.成年後見人とは?不動産売却との関係
1-1.成年後見人の役割と権限
成年後見人とは、判断能力が不十分な本人に代わって、財産管理や契約行為を行い、本人を保護する役割を担う人です。
成年後見制度および民法に基づき、家庭裁判所の監督のもとで活動します。
■ ① 基本的な役割(2つの柱)
①財産管理
本人の財産を守り、適切に管理する
- 預貯金の管理
- 不動産の維持・管理・売却
- 収支の管理(生活費・医療費など)
②身上監護
本人の生活・福祉を支える
- 介護サービスの契約
- 施設入所の手続き
- 医療契約の締結
※ただし実際の介護や看護をするわけではない
■ ② 主な権限
① 契約の代理権
本人に代わって契約できる
- 不動産の売買契約
- 賃貸契約
- 各種サービス契約
② 取消権
本人が不利益な契約をした場合
- 不適切な契約を取り消すことができる
本人保護の重要な権限
③ 財産処分権(制限あり)
財産の処分も可能だが不動産売却など重要行為は家庭裁判所の許可が必要な場合があります
■ ③ 権限の制限(ここが重要)
成年後見人は強い権限を持ちますが、何でも自由にできるわけではない
本人の利益に反する行為は禁止
- 安く売る
- 特定の親族に有利な取引
禁止されている
身分行為はできない
- 結婚
- 遺言作成
本人しかできない
家庭裁判所の監督あり
- 定期報告義務
- 不適切な場合は解任
■ ④ 不動産実務での重要ポイント
- 後見人単独では売却できないケースあり
- 必ず「本人の利益」が判断基準
- 家庭裁判所の許可が前提になることが多い
通常の売買とは別物と考える必要があります
1-2.なぜ本人の代わりに売却できるのか
成年後見人が不動産を売却できる理由は、
本人の判断能力が不十分な場合でも、生活や財産を守るために必要な行為を代わりに行う仕組みだからです。
これは成年後見制度および民法に基づくものです。
■ ① 本人の「判断能力の不足」を補うため
成年後見制度の前提
- 認知症
- 知的障害
- 精神障害
契約内容を適切に判断できない状態そのままだとなる為に
- 不利な契約をしてしまう
- 財産を失うリスク
そこで後見人が本人の代わりに意思決定を行う
■ ② 財産を守るための「代理権」がある
成年後見人には本人に代わって契約できる「代理権」があります
そのため
- 不動産の売却
- 賃貸契約
- 各種手続き
本人の代わりに実行可能になります
■ ③ 本人の生活を維持するために必要
不動産売却が必要になるケース
- 介護費用・医療費の捻出
- 空き家の管理負担軽減
- 施設入所費用の確保
生活を守るために売却が必要な場合がある
■ ④ ただし自由に売却できるわけではない
ここが最重要「本人の利益」が絶対条件
さらに
- 居住用不動産の売却 家庭裁判所の許可が必要です
■ ⑤ なぜ制限があるのか
理由、財産の不正処分を防ぐため
- 安く売る
- 親族に有利にする
こうした行為を防ぐため、裁判所がチェックする仕組み
2.成年後見人が不動産を売却する基本ルール
2-1.本人の利益が最優先
成年後見人の最も重要な役割は、本人(被後見人)の財産と生活を守ることです。
そのため、不動産を売却する際も、
「家族の都合」ではなく「本人の利益になるかどうか」
が判断基準となります。
・介護施設の入居費用を確保する
・医療費や介護費の支払いに充てる
・空き家の管理負担や維持費を減らす
・固定資産税や修繕費の負担を軽減する
・老朽化した建物による事故リスクを防ぐ
・相続人が現金化したいだけ
・親族が安く購入したい
・相続対策を優先した売却
・家族の借金返済のための売却
・本人の生活に必要な財産を減らす行為
2-2.自由に売却できるわけではない理由
成年後見人は、本人(被後見人)の財産を管理する立場ですが、財産の所有者はあくまでも本人です。
そのため、成年後見人は自分の判断だけで自由に不動産を売却することはできません
2-2-1.本人の財産を守るため
成年後見制度の目的は、判断能力が不十分な方の財産を保護することです。
もし後見人が自由に売却できると、
- 不当に安く売却する
- 特定の親族に有利な取引をする
- 本人に不利益な契約を結ぶ
といったリスクが生じる可能性があります。
そのため、法律によって厳しく制限されています。
2-2-2.不動産は重要な財産だから
不動産は多くの場合、本人の財産の中でも大きな割合を占めます。
一度売却すると元に戻すことは難しく、
- 住まいを失う
- 資産が減少する
- 将来の生活に影響する
可能性があります。
そのため、預貯金の管理以上に慎重な判断が求められます。
2-2-3.家族の利益と本人の利益は必ずしも一致しない
例えば、
- 相続人が早く現金化したい
- 空き家を処分したい
- 親族が購入したい
と考えていても、
それが本人の利益になるとは限りません。
成年後見人は相続人のためではなく、本人のために行動する義務があります。
2-2-4.家庭裁判所によるチェックがある
本人の居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所は、
- 売却の必要性
- 売却価格の妥当性
- 売却後の生活への影響
などを確認し、本当に本人の利益になるかを審査します。
2-3不動産売却の手続きの流れ
本人の判断能力が低下し、自ら不動産売却などの重要な契約ができない場合、家庭裁判所へ成年後見開始の申立てを行います。
申立てできる人
- 本人
- 配偶者
- 四親等内の親族
- 市区町村長 など
主な必要書類
- 申立書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 医師の診断書
- 財産目録
- 不動産登記事項証明書
本人の判断能力が低下し、自ら不動産売却などの重要な契約ができない場合、家庭裁判所へ成年後見開始の申立てを行います。
申立てできる人
- 本人
- 配偶者
- 四親等内の親族
- 市区町村長 など
主な必要書類
- 申立書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 医師の診断書
- 財産目録
- 不動産登記事項証明書
売却が必要と判断した場合、
- 登記内容の確認
- 固定資産税評価額の確認
- 市場価格の査定
を行います。
複数の不動産会社に査定を依頼することも少なくありません。
売却の必要性を検討
成年後見人は、
- 介護費用の確保
- 医療費の支払い
- 空き家管理負担の軽減
など、本人の利益になることを確認します。
売買契約の締結
買主が決まり、条件が整えば売買契約を締結します。
ただし、居住用不動産の場合は契約後に家庭裁判所の許可申立てを行うことが一般的です。
裁判所は、
- 売却の必要性
- 価格の妥当性
- 本人への影響
を審査し、問題がなければ許可を出します。
許可取得後、
- 残代金受領
- 所有権移転登記
- 引渡し
を行い、売却が完了します。
3.よくあるトラブル事例
3-1.許可前に契約してしまった
成年後見人が本人の居住用不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要です。
そのため、許可を得る前に契約を締結した場合は注意が必要です。
原則
居住用不動産については、
家庭裁判所の許可がなければ有効な売却はできません。
後見人が単独で契約しても、その契約は無効となる可能性があります。
実務上よく行われる方法
実際の不動産売買では、
売主・買主の条件を先に固めるため、
売買契約書に次のような特約を入れることがあります。
「家庭裁判所の許可取得を停止条件とする」
または
「家庭裁判所の許可が得られなかった場合は契約を解除する」
という特約です。
この場合、許可取得を前提として契約を進めることができます。
買主への説明が重要
後見案件では、
- 家庭裁判所の許可が必要であること
- 決済まで時間がかかること
- 許可が下りない可能性があること
を買主へ事前に説明することが重要です。
3-2.価格が不適切で許可が下りない
不動産会社が準備しておくべき資料
- 査定書
- レインズ成約事例
- 近隣売出事例
- 価格査定の根拠資料
- 販売活動報告書
不動産は本人の大切な財産です。
もし相場より安く売却すると、
- 本人の財産が減少する
- 将来の介護費や生活費に影響する
- 相続人や親族とのトラブルになる
可能性があります。
そのため家庭裁判所は価格の妥当性を慎重に確認します。
3-3.後見人の判断が問題になるケース
成年後見人は本人(被後見人)の財産を管理する権限を持っていますが、その判断が常に正しいとは限りません。本人の利益を損なう行為をした場合、家庭裁判所から指導を受けたり、後見人の解任につながることもあります。
① 相場より安く不動産を売却した場合
不動産を市場価格より著しく安く売却すると、
- 本人の財産を減少させた
- 善管注意義務に違反した
と判断される可能性があります。
特に親族や知人への売却は慎重な対応が求められます。
② 売却の必要性が乏しい場合
本人に十分な預貯金があり、
介護費や生活費に困っていないにもかかわらず、
自宅を売却した場合は問題になることがあります。
③ 親族の利益を優先した場合
例えば、
- 相続しやすいように売却する
- 親族が安く購入する
- 家族の借金返済のために売却する
などは本人の利益ではなく、親族の利益を優先した行為とみなされる可能性があります。
④ 家庭裁判所の許可を得ずに売却した場合
居住用不動産は家庭裁判所の許可が必要です。
許可を得ずに契約や引渡しを行うと、
- 売買契約の効力
- 後見人としての適格性
が問題となる場合があります。
⑤ 売却代金の管理が不適切な場合
売却後の代金は本人の財産です。
例えば、
- 親族の口座に入金する
- 私的に流用する
- 使途を説明できない
といった行為は重大な問題となります。
⑥ 独断で判断した場合
後見人は専門家ではないことも多いため、
- 不動産会社への相談
- 弁護士・司法書士への相談
- 家庭裁判所への報告
を行わず独断で進めると、後から問題視されることがあります。
成年後見人による不動産売却は、早めの相談が成功のポイントです
成年後見人が関わる不動産売却は、通常の不動産売買とは大きく異なります。
「家庭裁判所の許可が必要なのか分からない」
「売却価格はどのように決めればいいのか」
「親が施設に入ったため実家を売却したい」
「後見人に選任されたが何から始めればいいか分からない」
このようなお悩みをお持ちの方も少なくありません。
成年後見案件では、売却活動だけでなく、
・適正な価格査定
・必要書類の整理
・家庭裁判所への許可申立てを見据えた資料準備
・司法書士や専門家との連携
が重要になります。
マチ不動産では、神戸市灘区・東灘区を中心に、成年後見人による不動産売却のご相談を承っております。
「まだ売却するか決めていない」
「まずは話だけ聞きたい」
という段階でも構いません。
大切な財産だからこそ、本人の利益を第一に考えながら、安心して進められる方法をご提案いたします。
成年後見人による不動産売却でお悩みの方は、ぜひマチ不動産までお気軽にご相談ください。










