2020年2月より国土交通省の検討委員会で『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインが2021年10月8日に公表されました
心理的瑕疵(しんりてきかし)はいままで不透明でわかりにくいことでしたが、一定の指標になるのではないでしょうか
ガイドラインでは宅建業者が居住用不動産の取引で人の死に対して取るべき対応、義務が整理されていて、宅建業者が告知するしないの場面が述べられていますが基本的には『取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合はこれを告げなければいけない』としています
ガイドラインでは取引の相手次第というはっきりしないガイドラインになっています
不動産取引で人の死に対して判断基準がない
前の入居者がこのお部屋で亡くなりました
と言われて好んで入居する方はいません
そのため、宅建業者はそのことをいう義務があるかどうか長年に渡り棚上げ状態でした
そのため、高齢者を入居を拒む管理会社も多く賃貸利用が妨げられていました
ガイドラインのポイント
明海大学不動産学部長 中城康彦座長
- 令和2年2月 第1回検討会開催
- 令和3年4月 第6回検討会開催
- 令和3年5月~6月 パブリックコメントを実施(計218件)
- 令和3年9月 第7回検討会開催
告知しなくてもいい場面とは
- 【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)。 ※事案発覚からの経過期間の定めなし。
- 【賃貸借取引】取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した①以外の死・特殊清掃等が行われた①の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後
- 【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した①以外の死・特殊清掃等が行われた①の死
➊❷❸の場合でもガイドラインでは事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は告必要があるとしています
更に告げる場合も亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。としています
取引の相手方等の判断に重要な影響とは?
ガイドラインでは取引相手方が契約するかしないか判断に重要な影響を及ぼす場合にはこれを告げなければないないとしています
ただ、人によって判断基準は様々です
宅建業者は取引の相手の内容を十分に把握して告知するしないは判断しなければいけません
どんな場合でも『人の死』ということは取引の相手方に話をしなければいけないということになります
まとめ
国土交通省ではできるかぎり、告知義務をなくして不動産取引を活発にしたいという思惑はありますが、はっきりと線引きすることよりは宅建業者に判断をゆだねた形のようです
ますます、『人の死』とかかわる不動産取引は難しくなったように感じます
告知するしないは宅建業者に委ねられているようです