正直に言うと、底地投資は地代収入だけで大きく儲かる投資ではありません。利益の多くは、借地人に底地を売る、借地権を買い取って所有権にするなど、「出口」を実現したときに生まれます。
そのため、底地投資で後悔する人の多くは、表面利回りや「安く買える」という言葉だけで判断し、借地人との関係や出口の見通しを確認しないまま購入しています。この記事では、営業担当者があまり強調しない底地投資のリスクと、成功のカギとなる出口戦略を本音で解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の投資をすすめるものではありません。実際の判断は、不動産鑑定士・弁護士・税理士などの専門家に相談のうえ行ってください。
『正直不動産』と底地投資:一癖ある「資産家の大家」の世界
『正直不動産』は、嘘がつけなくなった営業マン・永瀬財地が、本音で不動産取引に向き合う物語です。原作漫画は小学館「ビッグコミック」で連載され、山下智久さん主演でドラマ化・映画化もされています(映画.com)。
作品では、一癖も二癖もある資産家の大家や、次々に起こる不動産トラブルが描かれています(Wikipedia)。底地は、まさに地主・借地人・業者の思惑が複雑に絡み合い、「売る側が言いたがらない事情」が多い不動産の代表格です。
作中でも1,700万円が9,000万円になる夢のような投資が提案されています
それでいてリスク全くなしと提案するミネルヴァ不動産の花澤涼子氏。
底地とは:借地権が付いた「貸している土地」
底地(そこち)とは、他人に貸していて、その上に借地人の建物が建っている土地の所有権のことです。土地を借りて家を建てる権利を「借地権」といい、1つの土地に「底地(地主)」と「借地権(借地人)」の2つの権利が重なっています。
| 立場 | 持っている権利 | 主な収入・負担 |
|---|---|---|
| 地主(底地の所有者) | 土地の所有権 | 地代を受け取る。固定資産税(土地)を負担 |
| 借地人 | 借地権+建物の所有権 | 地代を支払う。建物の固定資産税を負担 |
旧法借地権と新法借地権の違い
借地権には、1992年8月より前に契約された「旧借地法」によるものと、それ以降の「借地借家法」によるものがあります。
- 旧法借地権:地主が更新を拒むには「正当事由」が必要で、実際には更新が続くことがほとんど。借地人の権利が非常に強いのが特徴です。
- 普通借地権(新法):旧法と同じく更新が原則で、借地人の権利は強いままです。
- 定期借地権(新法):契約期間が満了すると更新されず、更地で返還されます。
市場で売られている投資用の底地の多くは旧法借地権の付いた土地で、地主の立場から見ると「土地を自由に使える日がほぼ来ない」ことを前提に考える必要があります。
底地投資の仕組み:収入は「地代」「一時金」「出口」の3つ
底地投資では、安く底地を買い、地代を受け取りながら、最終的に借地人などへ高く売る(または所有権にまとめる)ことで利益を狙います。
| 収入の種類 | 内容 | 本音のポイント |
|---|---|---|
| 地代 | 毎月・毎年受け取る土地の賃料 | 固定資産税の数倍程度が目安で、利回りは高くないことが多い |
| 一時金 | 更新料、建て替え承諾料、借地権の譲渡承諾料など | 契約内容や借地人との交渉次第で、必ずもらえるとは限らない |
| 出口での売却益 | 借地人への底地売却、借地権との同時売却など | 底地投資の利益の中心。実現できるかが成否を分ける |
簡単な試算(仮定)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 更地としての価格 | 3,000万円 |
| 底地の購入価格 | 400万円 |
| 年間の地代 | 24万円 |
| 土地の固定資産税・都市計画税 | 年6万円 |
| 表面利回り(地代÷購入価格) | 6.0% |
| 実質利回り((地代-税金)÷購入価格) | 4.5% |
| 10年後に借地人へ900万円で売却した場合の売却益 | 500万円(諸経費・税金は別) |
※考え方を示すための仮定の数字です。底地の取引価格は、借地人との関係や契約条件によって大きく変わります。
この試算のとおり、地代だけで見ると利回りはそれほど高くありません。出口が実現できなければ、低い利回りのまま長期間保有し続けることになる点が、底地投資の最大のポイントです。
底地投資のメリットとデメリット・リスク
底地投資は、建物を持たない分だけ手間がかからない一方、借地人との関係や法律の制約によるリスクを抱えた投資です。
メリット
- 購入価格が安い:更地価格と比べて大幅に安く買えるため、少ない資金で都心の土地に投資できることがあります。
- 建物の管理が不要:建物は借地人のものなので、修繕費や空室リスクがありません。
- 地代は比較的安定しやすい:借地人は住まいを失いたくないため、地代を払い続けるケースが多いです。
- 一時金の収入がある:更新や建て替え、借地権の売買のタイミングで、承諾料などの一時金を受け取れる場合があります。
デメリット・リスク
- 土地を自由に使えない:旧法借地権では、地主の都合で土地を返してもらうことはほぼできません。
- 利回りが低い:地代は低めに設定されていることが多く、値上げ交渉も簡単ではありません。
- 借地人とのトラブル:地代の滞納、更新料の支払い拒否、無断の建て替えや転貸などで揉めることがあります。
- 売りにくい:買い手は借地人か専門の買取業者にほぼ限られ、流動性が低い資産です。
- 金融機関の融資が付きにくい:担保評価が低く、自己資金での購入が前提になることが多いです。
- 固定資産税と相続税の負担:地代が低いと、税金を払うと手元にほとんど残らないこともあります。また、相続税評価額(更地価格から借地権分を差し引いた額)は実際に売れる価格より高くなりやすく、相続時に負担になりがちです。
底地投資でよくある営業トークと、その本音
底地の営業では、魅力的な言葉が並びがちです。永瀬のように「言わなくてもいいこと」まで言うとしたら、こうなるでしょう。
| よくある営業トーク | 本音で言うと |
|---|---|
| 「都心の土地が数百万円で買えます」 | 買えるのは使えない土地。土地を自由に使える日はほぼ来ないと考えてください |
| 「建物の管理が不要で手間いらず」 | 建物の手間はない代わりに、借地人との交渉という別の手間があります |
| 「借地人さんがいずれ買い取ってくれます」 | 買うかどうかは借地人次第。資金がない、関心がない借地人も多いです |
| 「地代は値上げできます」 | 値上げは合意か裁判が必要で、時間も費用もかかります |
| 「利回り〇%です」 | 表面利回りです。固定資産税を引いた実質利回りで比べてください |
| 「すぐに転売できます」 | 底地の買い手は限られます。売りたいときに売れるとは限りません |
もちろん、良い借地人に恵まれ、出口がスムーズに進む底地もあります。大切なのは、営業担当者に「この底地の出口は具体的にどう考えていますか?」と聞き、根拠のある答えが返ってくるかを確かめることです。
底地を買う前のチェックリスト
底地は「書類」と「人」の両方を確認しないと、本当の価値がわかりません。購入前に次の項目を確認しましょう。
書類で確認すること
- 土地賃貸借契約書が残っているか(口約束だけの借地は要注意)
- 借地権が旧法か新法か、普通か定期か
- 契約期間・更新時期・更新料の取り決め
- 地代の金額と、過去の改定の履歴
- 建て替え・増改築・譲渡の承諾料の取り決め
- 土地の境界が確定しているか、建物の登記が借地人名義になっているか
人・関係性で確認すること
- 地代の滞納がないか(過去数年の入金記録)
- 借地人と前の地主の間でトラブルがなかったか
- 借地人の年齢・家族構成・建物の築年数(将来の建て替えや相続の時期)
- 借地人に底地を買う意向や資金があるか
お金で確認すること
- 固定資産税を差し引いた実質利回り
- 出口(借地人への売却・同時売却など)の想定価格と時期
- 出口が実現しなかった場合に、何年保有できるか
よくある質問(FAQ)
Q. 底地投資の出口にはどんな方法がありますか?
A. 主に次の4つです。
- 借地人に底地を売る(借地人は土地の完全な所有者になれる)
- 借地人から借地権を買い取り、完全な所有権にしてから売る
- 借地人と協力して、底地と借地権をまとめて第三者に売る(同時売却)
- 土地の一部ずつを交換し、それぞれが所有権の土地を持つ(等価交換)
いずれも借地人の合意が必要なため、日ごろからの関係づくりが欠かせません。
Q. 地代を値上げすることはできますか?
A. 固定資産税の上昇や周辺の地代相場などを理由に、値上げを求めることはできます。ただし借地人が応じない場合は、調停や裁判で決めることになり、時間と費用がかかります。
Q. 地代を滞納されたらどうなりますか?
A. 督促しても支払われず、信頼関係が壊れたと認められる程度の滞納が続けば、契約解除が認められる可能性があります。少額・短期間の滞納だけでは難しいため、早めに弁護士に相談しましょう。
Q. 底地投資は初心者でもできますか?
A. 法律や交渉の知識が必要なため、初心者向けとは言いにくい投資です。始める場合は、底地に詳しい不動産会社や弁護士・税理士など、相談できる専門家を確保してからにしましょう。
まとめ:底地投資は「借地人との関係」と「出口」を買う投資
底地投資は、安く土地を持てる一方で、利回りの低さ、借地人とのトラブル、売りにくさといったリスクを抱えた投資です。成否を分けるのは、地代の利回りではなく、出口を実現できるかどうかです。
- 底地と借地権の関係、旧法・新法の違いを理解する
- 表面利回りではなく、税金を引いた実質利回りで判断する
- 契約書・地代の入金履歴・借地人との関係を確認する
- 出口の方法と想定価格、実現しなかった場合の保有期間を考える
- 底地に詳しい不動産会社や専門家に相談する
『正直不動産』の永瀬のように、リスクまで正直に話してくれる担当者に出会えるかどうかが、底地投資の第一歩です。










